バスで行く他国の入国②

バス停の受け付けに『これから乗るバスでバンコクには何時くらいに到着するの?』と聞くと『明日の午後!』とバッサリ切り捨てるような答え。午後って幅広すぎ。
日本の新幹線が到着時間がだいたい午後かな?なんてアナウンスしたら、きっと大騒ぎになってニュースになるはず。
『きっといつかは着くんだろう…』と考え方を変換するしかないのだと諦めに似た悟りを開いた気持ちになった。
待ってるとバスが無事に来た。
バス停にバスが来るという当たり前のことが『ちゃんと来るんだぁ』と嬉しくて感激してしまった。
しかしこのバスに乗るというごく当たり前のことが日本基準とは大きく違い、全く想像もしてなかった現実が僕に襲いかかった。
一応寝台バスというネーミングのバスだったので、長時間にはなるが横になりながら、ゆっくりと過ごせばいいななんて甘く考えていたが、
その寝台は、シングルベットより狭い広さなのになぜか枕が2つある。えっ?2つ?と疑問に思う暇もなく全く知らないカンボジア人男性が申し訳なさそうに、
お邪魔します的な感じでその寝台ベッドに上がってきた。
体を横に向けて、身動きも取れない状況で見知らぬカンボジア人と肩触れ合いながら眠れという状況。
そんな僕の気持ちには御構い無しにバスは移動を始める。
長時間シートを倒せないバス地獄と、横にはなることが出来るが知らない男と添い寝付きの寝台ベッド。自分の体のサイズが細いから、
まだマシだが、これでもし中太りだったら…たぶん窒息死。まぁ、でもこれくらいのことでは人は死にはしないが、
それでも僕の人生の中では、かなり上位にランクインするほど忘れる事が出来ない苦痛な時間であることには変わりない。
密室のバスの中でイヤホンを付けないで、音楽流してる馬鹿も居るし、出発早々『もうこんなに辛いならタイまで行かなくても良い!
ここで降りてしまおう』と何度考えたかわからない。
もし誰かが死なない程度の毒性で即効性があって、
すぐ気絶するような吹き矢を持っているのなら、
8時間ほど眠れるように、どうぞ頚動脈に打ち込んでくださいと神に祈る破天荒な自分に吹き出しそうになりながら、
なんとか冷静に現状を受け入れる努力をしていた。
そんな願いが功を奏したのか、
ウトウトと眠りなのか気絶なのかを繰り返していると、
お腹に冷たさを感じ、
目が"ぱっちりと開いてしまった。
触ってみるとお腹の部分がベショベショに濡れている。
まさかこの歳でおねしょ?
そんなわけない。
慌てて原因を探ってみると、どうやらベッドの上のクーラーから水が滴り落ちて来てるようだ。神
様っているのか?どこまで僕に試練をあたえるんだ!などと見えないものに怒りながら本当の地獄を耐えるしかない。
寝たり起きたりを繰り返し、ようやく到着したカンボジアとタイの国境で出国手続きのためバスを降りることになった。
続く